矢羽根祭
本校の文化祭は「矢羽根祭」と呼ばれるが、その名の由来は、本校の校章ともなっている毛呂山町の伝統行事「やぶさめ」の矢羽根に源を発している。矢羽根祭は学校創設の年に第1回を数えて以来、毎年10月お第3土曜日と日曜日の両日に行われ、今年で第10回を迎えた。
矢羽根祭は当初より非公開または条件付公開(チケット制)という形で運営されてきた。これは主に警備上の問題からであり、新設校にありがちな不特定の外部の者による“文化祭荒らし“を防ぐためであった。実際、他の新設校で文化祭を最初から公開制にして、展示物破壊や演奏への乱入などが報告された例から判断すると、正常な文化祭育成という面では賢明であったかもしれない。しかし、文化祭が非公開であるということは、生徒の立場からすれば非常に不満であり、文化祭に取り組む意欲を高揚させられないという現象を生んでしまった。つまり、見に来る人がいないのに頑張ってもつまらないというのである。こうした状況に対応するために、第7回より、父兄や地元小中学生の招待と生徒1人につき5人の友人の招待というチケット制公開に踏み切った。そして、本校は第十周年記念でもあり、より多くの人に本校生徒の活躍を見てもらいたいという願いと、過去5年間のチケット制公開の自信とにより、一般公開により近い形を目指す方向で検討中である。
矢羽根祭の内容については、クラブ、クラス、有志の三本柱で成り立っており、これは第1回より大きな変化はない。クラブ発表は文化部がほとんどで、美術部や写真部の展示を始め、物理部のコンピュータ・ルームなどが毎年好評であるが、一方で各運動部による招待試合なども盛んに行われている。クラス参加については、最初の数回はクラス対抗の合唱や出し物などがあったが、ここ数年は各クラス独特の企画が登場している。ただし、近年の安易な祭り的企画の風潮に対して、できるだけ文化的な内容とするために、企画内容の検討や模擬店数の制限などを実施している。また、有志参加はご多分にもれずバンド演奏模擬展などが登場しており、むしろクラス展示などを食ってしまう勢いである。後夜祭は毎年2日目の夕方行われており、ファイアー・ストームを囲んでフォーク・ダンスや歌で楽しいひと時を過ごしている。しかし、これも年々参加者が減っており、矢羽根祭がやや低迷傾向であることを象徴しているようである。
さて、本年で第10回を迎える矢羽根祭の今後の見通しはというと、あまり楽観視はできない状態にある。つまり、生徒達はこれを機会に矢羽根祭を盛り上げて大いに楽しもうと意気盛んなのであるが、現実に目を向けると、生徒達から何かが生まれてくるのではなく、各クラスの担任や各クラブ顧問が“何をやらせたらいいのか“に頭を悩ませている状態だからである。これは矢羽根祭のみならず、他の生徒会行事にも言えることであり、この点が解決されない限りは真の意味での生徒による「文化祭」の実現は難しいであろう。
「創立十周年記念誌」より